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障害者アスリートを全力で応援して
社内の一体感も醸成する
株式会社WOWOW

日本初の民間衛星放送事業者として開局以来、映画やスポーツ、ドラマ、音楽などのエンターテインメントを有料放送でお茶の間に届けている株式会社WOWOW。法定雇用率の上昇を受けて障害者雇用に取り組む中、多数のスポーツ番組を放送していることから障害者アスリート雇用に着目。実際に採用したことで、社内にいい変化が生まれており、手応えを感じているという。今後も障害者アスリート雇用を前向きに検討したいと語る人事総務局人事部長奥野俊彦氏に伺った。

Q 障害者アスリートを雇用するきっかけを教えてください。

2013年4月からの障害者の法定雇用率アップを見越して、当時、当社でもホームページなどを通じて障害者を募集しました。お互いの条件がなかなか合わないために採用に至らず、私の前任者である当時の人事部長が頭を痛めていたようです。そうこうしているうちに、当社でもスポーツ番組を放送していることから、障害者アスリートはどうだろうとひらめいたそうです。そこで、障害者アスリート雇用について調べたところ、つなひろワールドの竹内社長に行き当たりました。早速お会してみたら、熱意あふれる竹内社長にすっかり魅せられ、お世話になることになったと聞いています。
私も人事部長に就任する際、前任者から竹内社長は熱い人だと伺ったのですが、お会いしたらまさにその通りの方でした。初めてお会いした際に、障害者アスリートの雇用をわかりやすく紹介したご著書をいただいたので、早速パラスポーツについて勉強させていただきました。

Q 障害者アスリートを選考するにあたり、どのようなリクエストをされましたか?

パラスポーツの中でも、車いすテニスや車椅子バスケットボール、陸上、卓球など、テレビで放送されるような競技がいいのではと考えたようです。そんな中、ご紹介いただいたのが、車椅子バスケットボールの豊島英さんです。練習環境の確認を兼ねて、豊島さんの活動拠点である宮城県仙台市に出向き、面接をして採用を決定しました。豊島さんが入社したことで法定雇用率もクリアできましたし、いい選手を採用で来たなと思っています。

Q 豊島選手を採用するにあたり、期待したことはありますか。

対外的には、もっと多くの方にパラスポーツやパラアスリートを知っていただくきっかけになればいいなと考えています。とはいえ、単なる広告塔ということではありません。仕事面でも大いに期待しての採用です。アスリートは当然、いつか引退します。選手として第一線で活躍してきた人は、普通のプロデューサーとは異なる目線を持っていますよね。その経験を活かして、引退後は番組を企画するのもいいですし、スポーツ解説をするのもいいと思います。もちろん、本人が希望すれば、スポーツ以外のことを担当していただくことも可能です。私たちとしては、そのための環境づくりをすることも考慮に入れて採用しましたし、豊島さんには引退後も当社で活躍してほしいと願っています。
また、実際に採用してみて、社内にとってのメリットが大きいとも感じています。それまで障害者と接する機会がなかった社員も少なくないため、正直、最初は豊島さんにどう接したらいいか戸惑っている者が多かったんです。お恥ずかしい話、オフィスの扉を開けてあげるべきかどうかも悩む者もいたんですよ。しかし、豊島さんが入社したことで、そうした疑問が少しずつ解消されていきましたし、多くの社員が障害について考えるようなりました。今後は、社内外を含めて障害もひとつの個性だと言える環境を作っていきたいですね。

Q 豊島選手は活動拠点である仙台での採用でしたね。

在宅勤務という扱いにしたのですが、それ自体が当社にとって初めてのケースでした。そのため、あれこれ模索しながらのスタートだったようです。社内でいろいろと検討した結果、自宅に仕事用のパソコンと専用回線を設置して社内と同じネット環境を構築し、勤怠はもちろん、各種申請もそのパソコンでできるようにしました。また、毎月1回、東京にあるオフィスに出社してもらい、豊島さんが所属する制作局スポーツ部で番組企画などに携わってもらったりしています。

Q 豊島選手を雇用するにあたり、設備などハード面で困ったことはありますか?

唯一、トイレがネックですね。当社が入っているビルには、車いす利用者が使えるトイレが別のフロアにしかないんです。ビル側と交渉したのですが、なかなか改装は難しいようで……。オフィスに出社する際は、トイレはエレベーターに乗って別の階まで行ってもらっています。オフィスのあるビルの周辺にはゆるくて長い坂がありますし、職場内には重い扉もあるのですが、豊島は苦にすることなくスイスイと移動していますね。そこはさすがアスリートということでしょう。

Q 奥野さんが人事部長に就任されたのは、リオパラリンピックの直前とのことですが、すぐに競技を観に行ったそうですね。

着任してすぐ、豊島さんが参加する日本代表チームの練習見学に行きました。車椅子バスケットボールを初めて観たのですが、とにかくそのプレーの激しさに驚かされました。その後、豊島さんと話したのですが、精神力の強さがひしひしと伝わってきまして、さすが日本代表に選ばれる選手は違うなと深く感動したのを覚えています。トップアスリートの勝負にかける思いやストイックさは、障害のあるなしに関わらず同じなんですね。こういう一流選手が同僚にいるだけでも、会社にとっては非常に有益だと思いますよ。

Q 豊島選手の活躍は、社員の方たちは知っていますか。

もちろんです。電子版の社内報『Frontier』で豊島さんの活躍ぶりを配信していますから。社内のパソコンを立ち上げると、トップページに『Frotier』が表示されるので、社員はみな、新着の記事をチェックしてから仕事に取りかかっています。また当社の公式フェイスブックでも彼の記事を投稿しているのですが、社員はもちろん外部の方も閲覧してくださって、「いいね」を押してくださるのもうれしいですね。

Q リオパラリンピックでは豊島選手も活躍されました。社内で応援されましたか。

当社では世界でも一流と言われるスポーツ大会を多数中継していますが、それはあくまで放送しているだけ。実際に同僚がそうした大会、しかもパラリンピックという世界最高峰のスポーツイベントに出場するというのはなかなかない経験ですから、もう大盛り上がりでした(笑)。壮行会を開いた際には、こちらの予想以上の人数が集まりました。豊島さんには日本代表のジャージを着てきてもらったのですが、その姿にも社員たちは感動したようで、「(サイン)ください」って次々とお願いしていましたね(笑)。オリジナルのタオルも作り、そこにみんなで応援メッセージを書いて豊島さんに渡し、リオに持って行ってもらいました。大会開催中は、IPC(国際パラリンピック委員会)との共同プロジェクトとして制作しているドキュメンタリー番組『WHO I AM』の制作チームが総勢13名、現地入りしました。4チームに分かれて密着取材をしていたのですが、その合い間を縫って豊島さんの応援にも駆けつけていたそうです。
国内にいた僕たちは、テレビで応援しました。視聴しやすい時間帯に放送された試合がいくつかあったので、その際は、社内で軽食を食べながらのパブリックビューイングを行いました。特に日本チームが勝利したカナダ戦は大興奮でしたね。豊島さんもゴールを決めるなど活躍して、たびたびカメラに抜かれていたため、そのたびにみんなでワーッと盛り上がったんですよ。つくづく、同僚にパラアスリートがいるっていいなと感じました。
リオパラリンピックでは、他局も含めた各メディアが今までにないぐらいパラスポーツを取り上げて、ルール説明や魅力などをていねいに伝えていました。一般の視聴者の方にも、パラスポーツがより身近になったのではないかと思います。これをきっかけに、東京大会に向けてますます盛り上がっていければいいですね。

Q リオ後、豊島選手はドイツの車椅子バスケットボールリーグ・ブンデスリーガへ。その挑戦はいつ決まったのでしょうか。

オファーが来たと伺ったのは、リオパラリンピックの直前、私が人事部に着任してすぐのタイミングでした。当社にとっては、サプライズでしたね。本人とは、リオから帰国後に面談しました。リオで目標としていた成績を収められなかったのが相当悔しかったのでしょう、厳しい環境に身を置いてさらなるパワーアップを図りたいので、ぜひ挑戦したいと言っていました。とはいえ、ブンデスリーガでは、平日に練習し、毎週末に試合。休日がほとんど取れないハードなスケジュールをこなさなければなりません。それで本当にやっていけるのかとの心配もありましたが、本人が望むなら会社として応援しようと決めました。

Q ドイツに送り出すにあたり、どのような制度設計をされたのでしょうか。

当社代表取締役社長の田中は、前職からパラスポーツとの関連が深く、熱い思いを抱いています。そのため、海外挑戦に際しても、心から豊島さんを応援していて、充分なサポートをしてあげてほしいと要望をいただきました。それを踏まえ、私たち人事部が制度見直しを行いました。意外に思われるかもしれませんが、当社には海外駐在員が少ないんです。もちろん、アスリートは初めてです。そういう意味で、当社にとってもチャレンジでした。あれこれ検討しましたが、最終的に長期海外出張扱いにすることで落ち着きました。そうすれば、手当を出すことができ、練習に集中してもらうため必要なサポートがある程度できるからです。現地では、生活を送る上でそろえなければならないものも少なくありませんし、何より、必要な栄養をきちんと取ってもらわなければなりませんから。とはいえ、決して贅沢をしているわけではないと思います。住居は、チームの集合アパートで、チームメイトたちと一緒に住んでいますしね。
また、スポーツ選手にはケガがつきものですから、保険についても考慮しました。チームとの契約において、あいまいな点をクリアにする作業なども必要でした。とにかく初めてのケースなので、渡独後も本人と相談しながら、必要に応じて規定を調整するなど、柔軟に対応しています。

Q ドイツに行ってから変わったと感じることはありますか。

ハードな練習や試合の連続で、もまれているんでしょうね、顔つきも体つきも、ぐっと精悍になりました。その姿からも、もっと実力をつけてステップアップしたい、日本代表として海外チームに勝ちたいと思っているのがひしひしと伝わってきます。なにしろ団体競技なので、なかなかチームとしての結果を出せずに悔しい思いをしているようなのですが、個人としては確実に成長していることを考えると、ドイツに送り出してよかったと思います。当然、東京パラリンピック出場も狙っています。後輩からも相談を受けるなど信頼されているようですから、東京大会では中心選手になるのではと期待しています。

Q レポートを書いてもらっているそうですね。

月に一度、テーマに沿って写真付きのレポートを送ってもらい、それを社内報に掲載しています。そもそもこのレポートは、「せっかくドイツに行くなら、現地で学んだことを社員と共有し、社員にいい影響を与えてほしい」という社長の要望からスタートしました。テーマは大きく分けてふたつあります。ひとつ目は、障害者を取り巻く環境についてです。この点では日本よりドイツのほうが圧倒的に進んでいるそうなので、その実態をレポートしてもらいます。また、2020年に向けて日本も徐々に整備が進んでいますが、ドイツでの経験を踏まえて、「もっとこうしたらよいのでは」といった提案が出てくることも期待しています。
ふたつ目は、当社の事業に関わるものです。当社はエンターテインメントに携わる企業ですが、まだまだ切り拓いていかなくてはならない分野があると考えています。そこで、ドイツの風習や文化などをレポートし、それらを踏まえた上で新たなアイデアが出てきてほしいと願っています。
渡航前に豊島さんと相談しながら、毎月のテーマを設定し、レポートしてもらっています。ちなみに第1回目は、健常者と障害者の壁がないといわれるドイツ社会の実態を探ってもらいました。また、年末にはクリスマスマーケットの様子を華やかな写真とともにレポートしてもらったのですが、これは社内でも大きな話題となっていました。文章にも人柄が出るものですが、つくづく実直な、いい選手を採用してよかったと思います。

Q 今後も障害者アスリート雇用についてお考えですか。

そうですね。パラアスリートには素晴らしい選手がたくさんいますからね。現役時代に活躍してもらいたいのはもちろん、引退後も当社に貢献してもらえるよう、雇用形態など制度面をきっちりと整えていかなければならないと考えています。そして、当社もますますスポーツ界を盛り上げていきたいです。
(2017.1)

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