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経営統括本部 総務人事部 次長
織戸善子様三建設備工業株式会社

企業インタビュー(三建設備工業株式会社) | 障害者アスリートのための求人・就職・雇用支援(株)つなひろワールド

1946年に創業し、2026年には創業80周年を迎える三建設備工業。空気と水の環境創造企業として、持続可能な社会づくりに貢献するため、建築設備の企画、設計、施工等のトータルサポートを通じてお客様と社会が求める環境づくりを提案し実現している。その同社が2020年に初めてパラアスリートを採用。2023年に入社し、昨年のパリパラリンピックで金メダルに輝いた車いすラグビー・草場龍治選手をはじめ、現在は4人を雇用している。社内でも少しずつパラスポーツへの関心が広がり、会場に応援に行く社員もいるほどだ。そこでパラアスリートの採用を担当する経営統括本部総務人事部次長の織戸善子氏にインタビュー。採用のきっかけや、パリパラリンピックを契機とした社内におけるパラスポーツの興味の広がりなど、話を伺った。

Q貴社のパラアスリート採用は2020年4月が最初で、2021年11月、パラカヌー・下野勝也選手、ボッチャ・藤井金太朗選手を採用したそうですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

最初のきっかけとしては、障がい者の法定雇用率がどんどん上がっていく中で、当社として今後どのようにして達成していくかということが議題に上がっていたことにありました。建設業である当社では、社員の約6割が建設現場で働くこともあり、障がいのある方を雇用した際に、どのように働いていただくのがよいのか、その業務内容について悩んでいました。そんな中、偶然目にしたのが、つなひろワールドさんの「パラアスリート採用」についてのDMでした。当時はパラアスリートの採用についてはまったく知りませんでしたが、上司に話をしたところ「セミナーに行って、話を聞いてきたらどうだろう」ということになりました。それが2019年の夏だったと思いますが、実際にセミナーに参加したところ、競技自体を業務にするという話を聞いて「なるほど、それはいいかもしれない」と思いました。社員である選手たちを応援することで広報活動など会社にとってもプラスになるだろうし、障がい者の法定雇用率達成を目指すこともできる。これは当社に適した雇用形態だと思いましたので、社内に持ち帰って検討した結果、パラアスリートを採用することが決定しました。

Q2023年4月にはデフゴルフ・岩崎善徳選手、同年6月には車いすラグビー・草場龍治選手を採用しました。2人が貴社に入社した経緯について教えてください。

パラアスリート採用には、選手が競技に専念する形と、会社の業務と競技を両立する形の大きく2つがあると聞いていたのですが、当社としては競技に専念してもらう雇用形態の方が双方にとってよいのではないかと考えていました。そんな中で、つなひろワールドさんからご紹介いただいたのが、以前働いていた会社との契約が満了するタイミングだった岩崎選手でした。一方、草場選手とは2021年入社の下野選手を介して知り合いました。下野選手は当時車いすラグビーをしており、同じ福岡ダンデライオンというチームに所属していたのが草場選手でした。草場選手は、2021年の東京2020パラリンピックで車いすラグビー日本代表の活躍を見て刺激を受け、「自分も代表になって世界で戦いたい」という気持ちが膨らんだそうです。当時勤めていた会社の方たちからもとてもよくしていただいていたそうで、すごく迷いはあったようですが、やはり競技に専念できる環境が欲しいということで、当社に入社する運びとなりました。

企業インタビュー(三建設備工業株式会社) | 採用事例 | 障害者アスリートのための求人・就職・雇用支援(株)つなひろワールド

Qパラアスリートを採用するうえで、どんな点を重視しているのでしょうか?

競技に専念してもらうという雇用形態をとっていますので、まずはやりたいことが明確で、しっかりと目標を持っているかどうかが大事です。とはいえ、必ずしも日本代表にならなければならないとか、パラリンピックに出場してメダルを取ってもらいたいということではありません。厳しい勝負の世界ですから、目標がかなわないこともあると思います。ですので、当社では結果よりも前向きに競技に取り組む姿勢や、信念をもって目標に向かっていく過程の方を重視しています。いずれにしても、アスリートであると同時に当社の社員であるという自覚を持ち、しっかりと活動していける選手かどうかを最も大事にしています。

Q実際にパラアスリートを採用してみて、いかがでしたか?

正直、最初は不安もありました。例えば、岩崎選手が入社する際、それまで聴覚障がいのある社員を採用した経験がなかったので、コミュニケーションはどうとればいいのかな、というような心配がありました。でも採用試験でリモートでの面談をしたところ、チャットでスムーズにコミュニケーションがとれることがわかったんです。また直接会う際には、UDトークなどコミュニケーション支援アプリを活用することで、問題なくやりとりすることができます。それと、これも採用をして初めて気づいたことですが、パラアスリートのほとんどが自分で車を運転して試合会場や合宿先に行くため、何百キロという遠距離を日帰りしたり、夜遅くに運転をしたりすることもそう珍しいことではありません。でも、社員の安全を守ることも会社の責任ですので、当社としてはそうした危険が伴う移動はしないでください、と伝えています。会社に申請すれば経費も出ますので、遠距離の場合は前泊や後泊するなどして、必ず余裕のあるスケジュールで移動するようにしてもらっています。あとは障がいと言ってもそれぞれ事情は異なりますので、ひとくくりにして考えるのではなく、一人ひとりを見るということも大事にしています。

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Qパラアスリートを採用して良かったと思うことは何でしょうか?

もちろん当初の目的でもあった障がい者の雇用率達成ということもありますが、それだけではありません。社員がパラスポーツに興味を持つようになって、選手たちのことが話題に上がることが増えました。特に昨年、草場選手が車いすラグビー日本代表として出場し、金メダルに輝いたパリパラリンピックを機に、パラアスリートを応援する雰囲気が社内に浸透してきていて、多様性社会という観点からもパラアスリートの採用は当社にとってプラスになっていると感じています。

Q織戸さんは、パリパラリンピックを現地で応援されたそうですね。

当社からは、2名でパリパラリンピックに行きました。私自身、初めてのパラリンピックだったのですが、まさにスポーツの祭典だなと思いました。もちろん、それまでも国内の大会には何度か応援に行ったことがありましたが、パラリンピックはやはりスケールが違いました。日本代表選手が一つになってメダル獲得に向けて突き進む姿や、諦めない姿を間近で見て、「本当にすごいな」「これがアスリートの姿なんだな」と思いました。草場選手はふだんは口数もそれほど多くはないですし、ほんわかした雰囲気の好青年という感じなのですが、パラリンピックという舞台に上がった彼はまったく違いました。自分からチャンスをモノにしていくようなたくましさがあって、本当にすごかったです。草場選手が金メダルを持って出社した時は、社長をはじめ社員たちも大喜びで温かい拍手で迎えられたんです。草場選手本人も、本当に嬉しそうでした。

Qパリパラリンピックを機に、変化を感じられていることはありますか?

特に車いすラグビーに興味を持つようになった社員が増えて、昨年12月の日本選手権や、今年2月のジャパンパラ競技大会にも、何人か会場に足を運んで草場選手の応援に行ってくれました。ジャパンパラで日本代表が優勝した結果を社内で通知した時には、「日本、強いね!」「草場選手、活躍しているね!」というふうに話題にしてくれていました。やはり身近にアスリートがいるというのは大きいなと感じています。少しずつ会場に応援に行ってくれる社員の数は増えているのですが、もっとたくさんの社員に実際に選手たちが活躍する姿を見てほしいなと思っています。そのためにも、当社でオリジナルの応援グッズを作るのもいいのではないかと考えています。おそろいのグッズを持って応援に行けば、もっと盛り上がって、社員も楽しいと思いますし、選手たちも喜んでくれるのではないかなと、今計画中です。

Qパラアスリートを採用して、どんなところが良かったと思いますか?

例えば、下野選手には社内の若手社員や新入社員向けの研修の時に講演をしてもらっています。パラアスリートが当社に所属しているということを広く知ってもらいたいということもありますが、さまざまな境遇を経験してきた下野選手だからこそ、逆境に負けない強さや、諦めない気持ちの大切さなど、若手に伝えられることがたくさんあると思います。実際、講演の感想を書いてもらうと、前向きな言葉がたくさん書かれていて、心打たれる社員が多いようです。「素晴らしいお話を聞かせていただき、ありがとうございました」と、下野選手に直接感謝の言葉を伝えに行った社員もいたそうです。

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Q今後については、いかがでしょうか。

障がい者の法定雇用率は段階的に引き上げられ、来年7月には現在の2.5%から2.7%になります。また建設業の障がい者雇用の除外率も、今年4月にはこれまでの20%から10%に引き下げられました。こうした現状を踏まえますと、障がい者の雇用率をさらに上げていく必要があると思っています。そのなかで、パラアスリートの採用についても考えていきたいと思っています。

(2025.4)

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